ぶどう山椒の魅力
うなぎの蒲焼き、麻婆豆腐、温かいご飯にちりめん山椒……。山椒は、私たち日本の食文化に欠かせない魅力的なスパイスですが、海外ではジャパニーズペッパーと呼ばれ、甘いものや油脂類とも相性が良いことから、料理のみならず、チョコレートやジェラートなどの菓子類にも利用されるなど、スパイスを使い慣れているヨーロッパで注目を集めています。
一方、製薬の分野でも活用されています。山椒に含まれるサンショオールの効能により、血液循環を促して代謝を高め、身体を芯から温める効果から、古来より薬として使われ、現在も健胃薬である苦味チンキや漢方薬の処方に用いられています。また近年では、ポリフェノールによる抗酸化作用をはじめ、抗MRSA作用、抗がん作用が見つかるなど、その働きに注目が集まっています。
そんな山椒の中でも、有田川町で栽培される「ぶどう山椒」は大粒の実をぶどうの房のようにつけることからその名が付きました。有田川町の中でも、きとら農園のある遠井地区は、特に大粒で、香り高く、鮮やかな緑色をした最高品質のぶどう山椒を産することで知られています。
きとら農園では、グリホサートを含むラウンドアップ等の除草剤を一切使用せず、15,000㎥の園地のすべてを手作業で草刈りをしています。春は高級食材花山椒に始まり、初夏の実山椒、夏の乾燥山椒、秋の赤山椒まで、年間を通して、安心・安全のためのメンテンナンスを心がけ、さらに、遠井のぶどう山椒の価値を高めるために、栽培技術を磨いています。
花山椒
収穫:4月中旬
収穫量は少なく、とても希少な高級食材です。山椒の花には雄花と雌花があります。特に雌花は摘むと実にならないので、ほとんど流通しない貴重品です。雄花には上質な香りとほどよい刺激がありますが、雌花はそれに加えて上品な甘みが感じられます。収穫期には、高級割烹や懐石料理店で花山椒を使った料理が供されます。
実山椒
収穫:5月〜6月
初夏、黄緑色のみずみずしい粒を収穫します。鮮度の良い内に下処理、あく抜きをした実を、ちりめん山椒や佃煮に調理します。また、香り付けや防腐用として、ぬか床にも使われています。実山椒は一年ほどの冷凍保存が可能です。
乾燥山椒
収穫:7月〜8月
収穫した山椒を乾燥させたものです。軸と種を外し、臼やミルで挽くと「粉山椒」になります。鮮度の良い実の乾燥山椒は、挽いても鮮やかな緑色が残ります。粉山椒は、辛みだけでなくさわやかな香りも強く、その風味と色が、料理人のみならずパティシエからの注目も集め、国内外でさまざまな料理やスイーツに使用されています。
赤山椒
収穫:9月下旬〜10月中旬
秋まで樹上で完熟させた山椒を収穫したものです。緑色の乾燥山椒と比べて、上品ですっきりした辛みと芳醇であることが特徴。秋まで実をならせることで母樹に負荷がかかるため、取り組む農家も少なく希少品です。